2021年4月は気候変動ムーブメントに大きな動きがあったひと月だった。Fridays For Future Japanにとっても、アクションやイベントなどで大忙しだった。Fridays For Future Japanの黒部睦氏が4月を振り返る。
Fridays For Future Japanからの報告
4月はとんでもない1ヶ月だった。
新学期が始まり、周りの友達は学校の準備で大忙しなのに、私は起きてから寝ている間までずっと気候変動ムーブメントのことで頭がいっぱいだった。
この記事を読んでくださっている多くの方は既にご存知だと思うが、4月22日に日本の温室効果ガス削減目標(以下:NDC)が26%から2013年度比で46%に引き上げられた。この数値が何を表しているかは、頭の悪い私が説明するよりもこちらの分かりやすい記事を読んでいただきたい。
EnergyShift:温室効果ガス排出46%削減 実態はこうだ! 海外の思惑も国内インパクトもすべて解説
日本のNDCが今年11月に行われるCOPに合わせて引き上げられるとの情報を聞き、私たちは昨年から様々なアクションを企画してきた。しかし、私達の予想よりも早く、その目標が決まることになった。「おいおい!急すぎるでしょ!」と思いつつも、何もしないわけにはいかない。
私たちは緊急で「#温室効果ガス削減目標の大幅引き上げを求めます」 「#気候危機を止めるために学校休みます」というハッシュタグを使って、4月の毎週金曜日に学校ストライキを行った。
いい意味でも悪い意味でもこのハッシュタグは注目を集めた。私たちは学校も勉強も好きだ。でもそれ以上に自分達の未来が奪われるのが怖かった。声を上げずに今の政策を認めていると思われること、そして誰かを傷つける社会に加担し続ける方がよっぽど嫌だった。
毎週金曜日、若者の有志が集まり、経産省前と国会議事堂前に集まりスタンディングとスピーチを行った。初めはたった6人だったが、日に日に仲間は増え、批判も増えたが同じように危機感を感じる仲間が増えた。
目標決定直前のスタンディングでは、多くの仲間が涙を流しながら目標の引き上げを求める姿があった。私はそれを見てとても苦しかった。
なぜ美しい地球で幸せに暮らしたいと願う私たちがこんなにも苦しい思いをしているんだろう。誰よりも幸せに生きたいと思っている人が、なんでこんなに苦しまなくちゃいけないんだろう。なぜ私たちの声は聞こえているはずなのに、反映されていないのだろう。
私は普段あまり人に怒ったりネガティブなことは発信しないようにしているが、今月はどこかモヤモヤした怒りが、ずっと頭の中をグルグルしていたように思う。
そしてもう1つ、緊急気候マーチ 0422を全国で開催した。全国の気候変動を止めたいと思った有志が集まり、各地の状況に合わせてマーチやスタンディング、オンラインアクションを行った。東京では、一般の方の参加を募らなかったにもかかわらず、経産省前に50人を超える有志が集まり思いを届けた。
アクションする中で1人の仲間がこんなことを言っていた。「大人たちは現実的な数値として低いパーセンテージを示しているが、その”現実的”とは何なのだろうか。私たちからしたら、そんな低い数字は非現実的で、今後も生き続けられる現実的な数値というのは62%なのではないだろうか」。
確かに、と思った。私たちが生きるためには「62%」が必要なのならば、それこそが現実的であり、それこそが最低限目標なのではないだろうか。
Climate Action Tracker:日本が最低62%まで目標を引き上げなくてはいけない理由
そしてこれらのアクションの他にも、様々な企画が4月末に集まっていた。
4月17日から4月23日は、「Peaceful climate strike」という、気候アクティビスト/モデルの小野りりあんさんとDEPT代表/アクティビストであるeriさんの2人が7日間の平和プロテストが行われた。
モデルの水原希子さんや女優の二階堂ふみさん、歌手のコムアイさんなど著名な方をお呼びし、気候変動について考えるアクションを行なった。最終日には「共鳴のストライキ」として、1日ハンガーストライキをする仲間を募る企画があり、私も参加した。
ハンガーストライキをすれば気候変動が止まるわけではないが、この思いをみんなと共有し自分と向き合い、そして気候変動と向き合う大切な時間になった(ただ私は次の日に大切なイベントを控えていたため、ハンガーストライキはかなり体に応えた)。
4月23日、ハンガーストライキでヘトヘトになりながらも46%の数値に抗議すべく首相官邸前に集まった有志たち
そして、4月24日には、世界40ヶ国参加、22ヶ国開催の気候変動対策を求める音楽ライブイベント「Climate Live」が開催された。
日本では、Anlyさんやermhoiさんなど若い世代のアーティストによる演奏、モデルの長谷川ミラさんや未来リナさん、気象学者の江守正多さんなどをお招きしたトークセッション、そして気候変動について説明した映像などなど、盛りだくさんの3時間半youtube生配信を行った。
実行委員としてイベントを開催してみて、多くの方に気候変動問題を「音楽」というツールを使って届けられたと実感している。
音楽には、人の心にすっとメッセージを届ける力がある。そしてこの深刻で重たい問題を、身近に感じることの手助けをする力がある。
NDC決定には間に合わなかったものの、COP26に向けて気候変動という問題を少しでも多くの人に広めることに協力できたのではないかなと思う。またCOP26直前の10月にも開催予定なので、そこではさらに政府に圧力をかけられるような大きなイベントにしたいと思っている。
アーティストさんによる演奏を見守る実行委員メンバーたち
4月はとにかく気候変動で頭がいっぱいな1ヶ月だった。私たちの未来を守るために、尊い命や自然を守るために、どうにかしなくちゃいけない。効果があるかわからないけれども、何かしなくちゃいけないと全力でみんなが声を上げた1ヶ月だった。
政府から出たのはその努力にふさわしい数値目標ではなかった。しかし、私たちは声を上げ続けなくてはいけない。ここで諦めてはいけない。なぜならここで声を上げることをやめてしまえば、この目標を容認したことと変わりないからだ。
私は今、絶望しているわけではない。未来は変えられると思っている。Climate Live Japanのスローガンは、「ウチらの声で世界は変えられる」だった。私は本当にそう信じている。
アメリカのお偉いさんのちょっとしたひと言で、日本の温室効果ガス削減目標がひょいと引き上がった。それならば、私たちの声がもっと大きくなれば、きっとこの思いは反映されるだろう。私たちは科学的な根拠に基づき現実的な数値を掲げている。その数値が、おぼろげに浮かんできた数値に負けていいわけがない。
もっとこのムーブメントを大きくし、私たちの声を大きくすれば、必ず明るい未来は訪れる。そう信じて、これからも自分たちの身体も大切にしつつ、この活動を続けていこうと思う。
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