再エネ大量導入を見越した電力ネットワークの次世代化をどうする? ノンファーム電源の抑制から火力の優先抑制へ:第22回再エネ大量導入小委員会 | EnergyShift

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再エネ大量導入を見越した電力ネットワークの次世代化をどうする? ノンファーム電源の抑制から火力の優先抑制へ:第22回再エネ大量導入小委員会

再エネ大量導入を見越した電力ネットワークの次世代化をどうする? ノンファーム電源の抑制から火力の優先抑制へ:第22回再エネ大量導入小委員会

2021/01/15

審議会ウィークリートピック

2020年12月7日、経済産業省において、第22回再エネ大量導入小委が開催された(第10回再エネ主力電源化制度改革小委との共同開催)。カーボンニュートラルに向けて再エネを大量に導入していくためには、電力ネットワークや調整力など課題が多い。今回はこの日の議題のうち、「電力ネットワークの次世代化」を取り上げる。

カーボンニュートラル宣言以降加速する再エネ推進の論議

前回、第21回再エネ大量導入小委員会(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会)の開催された2020年10月26日同日に、菅総理大臣から2050年カーボンニュートラル実現が宣言された。

このカーボンニュートラル宣言以降、すべての審議会において再エネ推進に向けた検討がより加速化されており、その中核を担うこの再エネ大量導入小委が果たすべき役割は一層大きくなっている。

今回の第22回再エネ大量導入小委員会では、「電力ネットワークの次世代化」、「再エネ予測誤差に対応するための調整力確保費用」、「FIP制度の詳細設計」が議題とされた。うち今回は、最初の「電力ネットワークの次世代化」を報告し、残りの議題は別稿に譲ることとする。

電力ネットワークの次世代化

電力ネットワークの次世代化の中でも、「マスタープランの策定」、「ノンファーム型接続の全国展開」、「基幹送電線利用ルールの見直し」という決して小さくはないサブ議題がある。

サブ議題1:マスタープランの策定

中長期的な電力系統の増強の前提となる「マスタープラン」は、実務的には電力広域的運営推進機関(広域機関)の「広域連系系統のマスタープラン及び系統利用ルールの在り方等に関する検討委員会」において検討が進められている。

マスタープランの策定にあたっては、①2021年春頃完成予定の一次案と、②次期エネルギー基本計画や2050年カーボンニュートラルといった長期を見据えた正式案、といった二段構えの進め方が取られる。

このうち①一次案については、現時点存在する再エネ目標や現実の導入量等を前提としたシナリオを用いることで、ただちに増強着手が必要な系統を明確化することを目的としている。

マスタープラン一次案策定に向けたベースシナリオの緒元は以下のとおりである。

表1.一次案向けシナリオの緒元

マスタープラン一次案策定に向けたベースシナリオ
出所:第22回再エネ大量導入小委

バイオマス・地熱・水力については、現行の2030年度エネルギーミックスの水準を採用するが、既にエネルギーミックスの水準を超過することが明らかな太陽光と陸上風力については、最新の供給計画における2030年想定値を用いる。なお洋上風力については現在、2030年10GW(1,000万kW)という数値が官民協議会にて議論されており、ここで決まった目標値がシナリオ緒元として用いられる。なおこれらベースシナリオを基に、一定の感度分析もおこなわれる予定である。

②の2050年を見据えたマスタープラン策定に向けては、まだ議論の入り口に立ったところであり、以下のような検討の視点が事務局や委員から例示されている段階である。

  • 慣性力や同期化力等の系統安定性の制約
  • 再エネの出力制御の許容度
  • 蓄電池やEV、水素等の蓄電技術やリソース
  • 費用便益評価で用いるCO2対策費用や燃料費
  • 技術発展や社会変化を踏まえた電力需要の将来
  • セクターカップリング(熱や運輸)
  • 国際連系線

これらの議論は日本だけでなく、すでに多くの諸外国で検討が進められていることから、それら先行事例を大いに参考にすべきであろう。

サブ議題2:ノンファーム型接続の全国展開

基幹系統については、2021年1月から全国的にノンファーム型接続の受付を開始することが前回の第21回再エネ大量導入小委において示された。

表2.ノンファーム型接続全国展開のスケジュール

ノンファーム型接続全国展開のスケジュール
出所:第22回再エネ大量導入小委

ノンファーム型接続では、電源が短期間で系統に接続できることや接続費用を抑制できるというメリットがある。このため、すでに従来のファーム型接続を前提とした系統接続等を申込済み案件(未契約)については、事業者が希望することでノンファーム型接続を選択可能とする。

なお基幹系統のほか、ローカル系統へもノンファーム型接続を適用することが、多方面から要請されている。

ここで基幹系統、ローカル系統について整理しておきたい。

基幹系統とは各送配電エリアの上位2電圧の系統を指しており、具体的な電圧はエリアにより異なる。沖縄では13.2万Vの1つであるほか、北海道では50万Vは無く27.5万V、18.7万Vが基幹系統である。また発電種別ごとの一般的な発電事業規模から想定される接続電源は図1のとおりである。

基幹系統はエリア内の広い地域に存在する多種多様な電源が利用しているのに対して、ローカル系統は、特定の電源(例えば太陽光だけ)が接続する可能性がある、などの違いが存在する。

図1.電源種ごとの連系電圧のイメージ

電源種ごとの連系電圧のイメージ
出所:第1回地内系統の混雑管理に関する勉強会

この基幹/ローカル系統の特性の違いを踏まえたうえで、ローカル系統へのノンファーム型接続の適用については、表3のような多くの課題が指摘されている。もちろんこれ自体は、ローカル系統へのノンファーム型接続の適用を否定するものではない。

ただしローカル系統の場合、必要に応じて・費用便益評価に応じて、直接的に系統を増強することのメリットが大きいのであれば素直に増強すればよく、ノンファーム型接続にこだわる必要性は薄いと考えられる。

また、東電PGエリアのように基幹系統のその次の電圧(15.4万、6.6万V)のローカル系統ですでに空き容量が無い場合には、先行してノンファーム型接続を適用していくなど、費用対便益の良いローカル系統から順次導入を進めることがよいと考えられる。

表3.ローカル系統ノンファーム型接続に向けた課題

ローカル系統ノンファーム型接続に向けた課題
出所:第22回再エネ大量導入小委

サブ議題3:地内系統・基幹送電線利用ルールの見直し

この議題もまずは基幹送電線が対象である。

従来の地内系統利用ルールすなわち混雑管理は、先着優先方式であったが、今後メリットオーダー方式に移行することが決定されている。メリットオーダー式混雑管理にもノーダル制やゾーン制など複数の方式があるが、速やかな導入を重視し、まずは「再給電方式」を開始することが合意されている。再給電方式とは、送配電事業者(系統運用者)が一定の順序に基づき、電源に対して出力増減の指令を与えることにより、系統混雑を解消する方式である。

ノーダル制等の他の混雑管理方式に比べれば相対的に導入が容易な再給電方式であるが、それでも以下のような解決すべき多くの課題が挙げられている。

表4.再給電方式導入に向けた課題

課題主要な検討主体
①費用負担の方法:
出力制御された電源と代わりに給電した電源との間の費用精算等
電力・ガス取引監視等委員会
②価格シグナルの確保:
混雑した系統への電源立地を抑制する(非混雑系統へ誘導する)価格シグナルの確保
広域機関
③インバランス料金への影響:
再給電方式の適用を踏まえたインバランス料金算出の整理
電力・ガス取引監視等委員会
④出力制御ルール:
現状は一律制御となっている考え方をどう転換するかの整理
再エネ大量導入小委
⑤調整電源の確保のあり方:
出力制御する電源や代わりに給電する電源(調整電源)の確保のあり方
広域機関
⑥容量市場や需給調整市場のリクワイアメントとの整合:
各市場に参加するための要件の整理
広域機関

出所:第22回再エネ大量導入小委を基に筆者作成

表4のように、ここ再エネ大量導入小委で検討すべき課題の一つが、④送配電事業者が電源出力を増減させる「一定の順序」の考え方である。

現在のルールでは系統混雑発生時には、ファーム電源よりも先にノンファーム電源が出力制御(抑制)される。ノンファーム電源の間には優先順位は無く、一律に抑制される。

混雑管理ルール自体は発電種別を問わないが、今後接続される新規電源の多くが再エネであることを考えると、燃料費が掛かりCO2も排出する火力が優先的に発電し、ノンファーム接続する再エネが抑制される現行ルールは問題視されてきた。

単純な経済性の観点では送配電事業者が確保する調整力のkWh価格に基づくメリットオーダーが想定されるが、これだけでなく環境性や安定供給性も考慮した3Eの観点に基づくメリットオーダーの実現が望ましい。

よって第22回小委では、燃料費およびCO2排出をベースとしたメリットオーダーの観点から、図2のように火力電源を非化石電源よりも先に出力制御することが提案された。もちろん、非化石という表現の中には再エネだけでなく原発も含まれる。

図2.系統混雑時の出力抑制順序イメージ

系統混雑時の出力抑制順序イメージ
出所:第22回再エネ大量導入小委

すでに予想されていたとはいえ、この優先順序の見直しは大きな変革である。

今回の議論はあくまで系統混雑時の抑制順序であるが、すでに需給バランス上では九州エリアのように、太陽光が抑制される前に火力が真っ先に抑制されている。今回の決定は、火力電源の維持・新設に対して一層不透明な材料をもたらすこととなった。

今後は詳細な論点として、火力電源の中での出力抑制の順序、非化石電源の中での出力抑制の順序などが検討される予定である。

非効率石炭火力のフェードアウト策の一つとして、基幹送電線利用ルールの見直しが当初から位置付けられてきた。「フェードアウト」には明確な廃止のほか、発電量の大幅抑制も含まれると整理されていることから、炭素価格がある程度内部化されるならば、炭素価格込みのメリットオーダーにおいては、非効率石炭火力が優先的に抑制される可能性が高い。

送電線利用ルールとは、このように強い力を持った制度であることをあらためて認識させられる小委であった。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda