東証の市場再編と気候変動・ESGの関係を改めて見直してきた今回のシリーズ。海外投資家にとって魅力ある市場とは何か(第1回)、企業の価値向上とリスクをどのように引き受けるのか(第2回)、過渡期にあるTCFDとIFRSなどのESG開示基準(第3回)とみてきたが、最終回となる今回は、ESG開示の今後と、中長期の企業価値向上に真に必要なものは何かを考える。
シリーズ:イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応
(1)なぜ今、東証再編? 海外から魅力のない日本市場の実態とは
(2)今こそコーポレート・ガバナンス・コードに向き合うべき理由
(3)東証再編でキーになるTCFD すべての企業は具体的に何をしていけばいいのか
温室効果ガス排出量の算出、特にスコープ3は世界でもその算出方法についてもまだ議論が続いている。そのスコープ3についてもタイムスパンは特に設けてはいないという。他の国でもスコープ3を年限で区切っているところはない。
「基本的には企業のビジネスモデルの重要性によってでいいのです。ビジネスの特性によってTCFDの対応は違ってくるのはある意味当たり前です。ただ、気候変動によってビジネスの影響を受けやすいビジネスモデルはより考えていかないといけないことも確かです。投資家によってマテリアルであるかどうかが重要ポイントです。投資判断にも有用であるポイントがある、というのを知らせるところからの話になる。
まず、TCFDをみると、リスクや機会を認識するようなガバナンス体制があることが前提です。その認識がなくてリスク管理や目標・指標といっても、前提(ガバナンス)が成り立ってないと、正しく考えられないということになります。
企業の中で、しっかりとした体制を持ってリスクや機会を捉えた、次のステップとして、自社のビジネスモデルにおいて重要であると思われるところ(指標と目標)に取り組みを進めていくことになる」(金融庁担当者)
TCFD提言における、推奨される開示媒体の考え方
経済産業省「TCFDガイダンス2.0」(2020年7月)
では、ビジネスモデルとして、気候変動リスクを開示しない、という選択はあり得るのだろうか。
「全体のつくりとしてはコンプライ・オア・エクスプレインの形になっている。たとえば今回のコードではサステナビリティの取り組みというところを仮に開示しない、3−1③を開示しないことも可能ではあります。だが、コンプライ・オア・エクスプレインなので、なぜ開示をしないのか、なぜこの原則に従わないのかを、きっちりとコーポレートガバナンス報告書や統合報告書で説明する必要があります。
株主が見る書類のため、相当な理由があれば株主から納得するということもあり得るが、昨今の状況を見ると、まったく開示をせずに納得をしてもらえる説明をするのは難しくはあると思う。否定はしないが原則に沿った開示が望ましい。
コーポレート・ガバナンス・コード(以下、CGコード)はソフトローなので、開示しなければ、即罰則ということではないが、緩やかな形で投資家からのプレッシャー、投資家からもそうした開示がされるような仕組み作りをしていったと理解してもらえれば、と考えます」(金融庁担当者)
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