東証再編でキーになるTCFD すべての企業は具体的に何をしていけばいいのか イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応(3) | EnergyShift

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東証再編でキーになるTCFD すべての企業は具体的に何をしていけばいいのか イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応(3)

東証再編でキーになるTCFD すべての企業は具体的に何をしていけばいいのか イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応(3)

2021年11月26日

東証の市場再編について、第1回は海外投資家からの魅力ある市場にするためという観点から、第2回は投資家のリスクと対話の観点からその意味を探ってきた。第3回は(本質的に)すべての上場企業に求められることになった、TCFD、または「同等の枠組み」について深堀して紹介する。

シリーズ:イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応
(1)なぜ今、東証再編? 海外から魅力のない日本市場の実態とは
(2)今こそコーポレート・ガバナンス・コードに向き合うべき理由

すべての上場企業に求められる気候変動リスクの情報開示

6月のコーポレート・ガバナンス・コード(以下、CGコード)改訂に明記されたTCFDだが、もう一度改訂の該当内容を確認してみよう。該当箇所は、第3章「適切な情報開示と透明性の確保」、原則3-1、「情報開示の充実」の、補充原則3にある。

上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略、経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

ここが、TCFD、または気候変動リスクに関してプライム市場が対応しなければ、という根拠になっている。

しかし、CGコードは上場企業全体に求めているものなので、スタンダード市場だから気候変動対策をしなくてもいいということにはならない。JPX資料でも、それぞれプライム市場は「より高水準」とあり、コンプライ・オア・エクスプレインの原則は上場企業すべてに適応される。

グロース市場にも基本原則3に非財務情報の開示、法令以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであり、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきとある。

また、上場企業には当然のことながら複数の調達先企業があるが、たとえば環境情報開示のひとつ、CDPはサプライヤーの環境情報を開示することを求めている。TCFDなどでもサプライチェーン全体のCO2排出量算定を求める場合もあるため、上場企業ではないから気候変動リスクを考慮しなくていい、とは今後ならなくなっていくだろう。

コンプライ・オア・エクスプレインの対象範囲

JPX コーポレートガバナンス・コードの改訂に伴う実務対応 より

そもそもTCFDとはなにか?・・・次ページ

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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