TCFDは4つの柱と11の項目がある。4つの柱とは、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標だ。そのそれぞれに推奨される開示内容が合計で11項目になる。
TCFDによる提言と推奨される情報開示
ガバナンス | 戦略 | リスク管理 | 指標と目標 |
気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する | 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、重要な場合は 開示する | 気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・ 評価しているかについて開示する | 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、重要な場合は開示する |
推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 | 推奨される開示内容 |
a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする | a)組織が選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会を説明する | a)組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する | a)組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する |
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する | b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する | b)組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する | b)Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する |
c)2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する | c)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する | c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する |
金融庁の担当者への取材では、この中には即時の開示が難しいものもある、と理解しているという。
「特に、一般的に難しいといわれているのはシナリオ分析、(戦略のC)です。あとは指標と目標のB、GHG排出量スコープ3にあたるところは難しいと思います。
ただ諸外国をみても、強制的に11項目をいきなり開示させるというアプローチではないと考えている。取り組みが進んでいるイギリスでも11項目はロンドンストックエクスチェンジのプレミア市場で求めているが、コンプライ・オア・エクスプレインでいい。かつ、データや分析の制約がある場合には、一定期間がかかることが想定されるというような文言も入っています。
非財務情報を開示しようと思って、すぐに開示できるものかというと、それなりの準備やデータ収集が必要になるため、いきなり強制的な開示は難しいと理解しています。
CGコードも「必要な開示を進める」ということでやはりすぐ、全てにおいて、ということは、例えプライム市場でも難しいのだろう。「ただ、それは投資家の話し合いの中で重要性があるものを少しずつでも進めていくという姿勢が大事だと思う」(金融庁担当者)。
温室効果ガス排出量 Scope1、2、3
金融庁 第2回金融審議会ディスクロージャーワーキンググループ 事務局参考資料より
次回はTCFDを含む、ESG情報開示について何が重要なのかを紹介していく。
シリーズ:イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応
(1)なぜ今、東証再編? 海外から魅力のない日本市場の実態とは
(2)今こそコーポレート・ガバナンス・コードに向き合うべき理由
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