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元WWF気候変動担当が問う。何が地球温暖化対策として重要か:原村からの便り

元WWF気候変動担当が問う。何が地球温暖化対策として重要か:原村からの便り

2021年11月17日

2021年は、前年の政府のカーボンニュートラル宣言などを受けて、新たな「エネルギー基本計画」や「地球温暖化対策計画」が策定される年である。10月22日に閣議決定されたそれぞれの計画が、目標に対して適切な内容なのか、検討の余地がありそうだ。千葉商科大学名誉教授の鮎川ゆりか氏が、それぞれの計画が抱える問題について示していく。

原村からの便り 8

気候変動政策へのパブコメが続いた9月

2021年の9月はパブコメラッシュの月だった。まず8月末に出された「気候変動適応計画」(骨子案)に始まり、9月3日から10月4日まで「エネルギー基本計画」、「地球温暖化対策計画」、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」、「日本のNDC(国が決定する貢献)」、「政府地球温暖化対策実行計画」があった。

そこで今回は、パブコメ後に閣議決定された、「エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」をもとに、どのような政策が温暖化対策として重要なのかを考えてみたい。

「エネルギー基本計画」、原子力では気候変動対策はできない

まず「第6次エネルギー基本計画」だが、電源構成としては、原子力が20~22%と前計画と変わらない数字になっている。しかし、原発をエネルギー政策・温暖化対策としておくことはやめるべきである。実際に原発を54基動かしていた時にも、CO2削減は出来なかった実態を思い起こせば、原発が温暖化対策にならないことは明らかである。むしろ原発が止まった2011年以降、2013年をピークに電力使用量、エネルギー使用量が減っている。CO2排出量も同様の傾向で減っている。皆が危機感を持ち、省エネに努めたからであり、さらに再生可能エネルギーが増えたからでもある。

原発は大量のエネルギーを創出するので、これを使う方向へ社会をリードし、脱炭素社会の省エネ・再エネ中心の社会には合わない。

さらに発電をすると必ず発生する使用済み核燃料の処分方法が確立されていない。そして万が一事故を起こした際のあまりにも膨大な被害、子々孫々にわたる環境汚染、原子炉の廃炉の難しさ、などから、原発を使い続けることは、福島原発事故を経験した日本として、やめるべきである。

また原発は温暖化が進むと「リスク」になることが、最近の研究で明らかにされている。

例えば2021年7月号の科学誌Nature(Vol.6)には、Ali Ahmad氏による「気候変動によって増加する原発停止」という論文がある。これによると気候変動の影響による原発の稼働停止(部分的および全面)が、1990年代に比べ、2010年代以降は8倍に上り、原子炉停止を伴うものは、5倍もある。

これらは、一つには熱波による冷却水の水温上昇や干ばつによって冷却水が得られなくなることにより、もう一つは強大なハリケーンや台風などの嵐によるものである。

冷却水の温度が高くなりすぎると発電効率が悪くなるので、発電を抑えて部分的に稼働、場合によっては全面的に停止することがある。また海水温上昇などにより、クラゲなどが取水口周辺に増えて、冷却水を取りにくくさせる場合もある。さらに熱波は森林火災を招き、原発で働く従業員を避難させるため、供給量をカットすることにつながる。

強大なハリケーンや台風などでは落雷や大雨による洪水で取水口にがれきなどが流れてくることが起こり、そうしたリスクを避けるために、事前に原子炉を停止させる場合もある。

これらは明らかに気温上昇がもたらすものであり、今後さらに気温上昇が続くとこうしたことがさらに増え、最も電力需要が大きくなる熱波の時に、原子炉を停止させなければならなくなる事態もありうる。

また海面上昇は、海岸沿いに建設されている原発には大きな問題だ。英国ヨーク大学のナタリー・コピトコ氏は、2011年に起きた東日本大震災による大津波、原発の爆発を、「気候変動のもたらすリアルな映像」と見て、「原発は気候変動に対して非常に脆弱であることを警告した」とNew Scientist誌で述べた。

コピトコ氏は2010年に、気候変動の結果巨大化した暴風雨やハリケーンなどが海面上昇した中でどのような影響を原発にもたらすかの研究論文を発表していた。また『ナショナル・ジオグラフィック』は2015年に、海岸や河川沿いに建つどの原発が、気温上昇が2℃の場合、4℃の場合に、水没するかを地図上にプロットしたものを示していた。

今年8月に出されたIPCCの第6次報告書(第1作業部会)は、海面上昇が引き続き起きることを明らかにした。現状のままの推移だと2100年には1990年比で最大2m近くの上昇があり、2300年には7m以上の可能性も示唆している。

原発にとって2100年は遠い未来の話ではない。原発の安全性確保期間は稼働中と廃炉期間を合わせると100年単位であり、2100年とか2200年はすぐそこの話だ。その間気候変動がどんどん進行した場合、原発の脆弱性を誰が、どのようにしてカバーできるのだろうか。

原発は温暖化対策として機能するより、温暖化により「爆弾」となりうる危険性をはらんでいると言える。アメリカの原子力技術専門家のデイビッド・ロックバウム氏は2007年という早い時期に「もし原発を使いたいなら、温暖化問題を先に解決しなければならない」と述べていた。原発に頼るエネルギー政策、温暖化対策を一刻も早く止めなければならない。

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鮎川ゆりか
鮎川ゆりか

千葉商科大学名誉教授 CUCエネルギー株式会社 取締役 1971年上智大学外国語学部英語学科卒。1996年ハーバード大学院環境公共政策学修士修了。原子力資料情報室の国際担当(1988~1995年)。WWF(世界自然保護基金) 気候変動担当/特別顧問(1997~2008年)。国連気候変動枠組み条約国際交渉、国内政策、自然エネルギーの導入施策活動を展開。2008年G8サミットNGOフォーラム副代表。衆参両議院の環境委員会等で参考人意見陳述。環境省の中央環境審議会「施策総合企画小委員会」等委員、「グリーン電力認証機構」委員、千葉県市川市環境審議会会長を歴任。2010年4月~2018年3月まで千葉商科大学、政策情報学部教授。同大学にて2017年4月より学長プロジェクト「環境・エネルギー」リーダーとして「自然エネルギー100%大学」を推進し、電気の100%自然エネルギーは達成。2019年9月より原村の有志による「自立する美しい村研究会」代表。 『e-コンパクトシティが地球を救う』(日本評論社2012年)、『これからの環境エネルギー 未来は地域で完結する小規模分散型社会』(三和書籍 2015年)など著書多数。

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