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COP26、日本は途上国中心に10兆円規模で資金支援表明 先進各国も増額相次ぐ

2021年11月05日

日本の支援金額は途上国のみで7.9兆円に達し、アジアを中心に官民で挑む

では、COP26において、日本はどのような姿勢をとったか。岸田首相は、11月2日の演説で、途上国への資金援助の増額を中心に、世界の脱炭素に向けて、多角的な支援を行う所信を表明した。

まずパリ協定での、先進国全体で年間1,000億ドルを途上国に支援する約束に対しては、2025年までに官民合わせて600億ドル(約6.8兆円)規模の支援をするとしていたが、それに加え、新たに5年間で最大100億ドル(約1.1兆円)の追加支援を行うとした。次に、「防災など、気候変動に適応するための支援を倍増し、約148億ドル(約1.9兆円)の支援を行う」ことと、「先端技術を活用し、国際機関と連携しながら、世界の森林保全のため、約2.4億ドル(約275憶円)の資金支援を行う」ことも表明した。さらに、アジア開発銀行(ADB)などと協力し、アジアなどの脱炭素化支援のための革新的な資金協力の枠組みの立ち上げなどにも貢献するとしている。なお、日本はこれまで、途上国の脱炭素のための資金援助のみならず、2021年の3月22日に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に対して、脱炭素技術普及のために約1億円(90万9,090米ドル)を拠出したことを公表している。

岸田首相の言葉にもあったように、脱炭素に向けた日本の援助はアジア全体のゼロエミッション化に向けたものが目立っており、これまで官民一体となって金融と技術の両面で支援を行ってきた。同時に、日本経団連は、気候変動分野における国際貢献として、日本の省エネ・低炭素・脱炭素に関する技術や製品、サービスを積極的に海外に展開することは、アジアの脱炭素を推し進めるだけでなく、日本企業のビジネスチャンスにもなるとしている。特に、今後、化石燃料を含めたエネルギー需要の拡大が見込まれるアジア諸国に対して、日本政府が主導するAETI(Asia Energy Transition Initiative)による脱炭素への移行が重要になると考えているのだ。

実際、民間企業では、IHIがマレーシアで、アンモニア焼成による石炭火力発電の環境性能高度化に向けて実証実験を行ったり、中部電力がベトナムの再エネ事業会社に出資したりしている。

また、金融面では、三菱UFJ銀行が東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要銀行と国際的な研究グループを立ち上げて「トランジション・ファイナンス(移行金融)」の指針作りに挑むなど、精力的だ。研究会には三井住友銀行やみずほ銀行も参加しており、脱炭素に急激に移行しようとする前に、成長と排出量の削減も両立ができるよう、金融面から支えていくと報じられている。

COP26で、先進国としての圧力が日本にかかる中、岸田首相が表明する内容をどれだけ実行に移していけるかが、脱炭素のみならず、日本企業の活路を見出す鍵となりそうだ。

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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