2021年4月、日本政府は2030年の温室効果ガス削減目標を、46%に引き上げることを宣言した。しかし、気候変動問題を解決していくためには、これはむしろまだ足りない数値だといえる。若者やその後の世代にとっては、未来にかかわる深刻な問題だ。削減目標と実現されるべき未来とのギャップについて、Fridays For Future Japanの黒部睦氏が訴える。
2021年4月22日のアースデイに合わせて、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリが「Mind The Gap」について1本の動画を公開した。
⚠️This is an emergency alert for the general public⚠️#MindTheGap#LeadersClimateSummit#EarthDay#NoMoreEmptySummits pic.twitter.com/e1z1A783I2
— Greta Thunberg (@GretaThunberg) April 22, 2021
Greta Thunberg instagram投稿
字幕オンにすれば自動生成の日本語字幕を見れるYouTube動画
残念ながら、この動画の和訳バージョンや内容を日本語で説明した記事などはほぼない。しかし、世界の動きに合わせて日本でも様々な気候変動対策が決定してきている中で、私たちはこのギャップを見逃してはいけないのだ。
今回は、この動画の内容を踏まえて、気候変動対策に声を上げる一学生として感じていることを書こうと思う。
今年11月に開催予定のCOP26に合わせ、気候サミットやG7など国際会議も進み、各国は次々と気候変動関連の公約や目標を掲げている。日本はこの気候サミットで、2050年のカーボンニュートラルを目指し、2030年までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減すると宣言した。政府はこの目標をまるで野心的なもののように振る舞った。そしてメディアも「大幅な引き上げを行なった」と報じた。しかし、現在の科学に基づいた数値と比較すると、私達が求めなくてはいけない数値と彼らが掲げる数値には、明らかにギャップがあることがわかる。前の記事でも述べた通り、Climate Action Trackerでは日本は最低でも62%まで目標を引き上げなくてはいけないのだ。
Climate Action Tracker Japan’s Paris Agreement target should be more than 60% by 2030 - analysis
Fridays For Future Japan「首相官邸による2030年温室効果ガス削減目標を46%とする表明に関する声明」
もちろん、私たちは政府の声明全てに真っ向から反対しているわけではない。以前に比べて気候変動に重点が置かれ、様々な政策が話し合われるようになったことはとても嬉しい。ただし、それらの目標に抜け穴がなければの話だ。そう、今の政策は抜け穴だらけなのだ。グレタは動画の中で抜け穴の例として、輸入品や国際航空、海運、バイオマスの燃焼などを挙げ、データの操作や公平性と歴史的排出量の側面の無視を指摘している。正直、私は全部を説明することはできない。しかし、こういった抜け穴を指摘する署名をここ数ヶ月で何度も何度もサインした気がする。それからも抜け穴がたくさんあることは感じている。
私もその一人だが、政府が掲げた目標に秘められた抜け穴に気づけず、素晴らしいもののように感じてしまっている人は多いだろう。環境問題に取り組んでいる人はかなり注意深くこのギャップに目を光らせているかもしれないが、一般の人が普通にニュースを見ていたら、問題に気づけないのも無理はない。
これは政府に限った問題ではなく、企業に対しても同じく厳しい目を持つ必要がある。世界の流れに乗り「サスティナブル」や「地球に優しい」という”ザ・地球のこと考えてますワード”を広告で押し出したり、印象の良いインフルエンサーを起用してイメージアップを図ったりしている企業は増えている気がする。こういったCMやニュースを見る時は、素敵な言葉や映像に騙されぬように真顔で見るのがおすすめだ。
たとえ私たち人間を欺くことはできたとしても、自然と科学を欺くことはできない。そしてその隠していた分のツケが回ってくるのは私たち若者やこれから生まれてくる子たちだ。そんなのずるい。だから、私たちは絶対にこのギャップを見過ごしてはいけないのだ。
この問題の核心は、意識のギャップの大きさにある。私自身、普段この活動をする中で、意識のギャップを感じることは多い。自分の未来の事を考え絶望し涙を流しながら気候変動政策を求める学生と、出来ることはやっていると誇らしげに語る大人との危機感の差は大きい。
実際、日本の温室効果ガス削減目標が46%に引き上げられた時、報道を見ながらああだこうだ言っている私を見て「でも高くなったんでしょ?いいじゃないのよ」と言ってきた大人がいた。私たちは気候変動は自分らを含め大勢の命がかかった人権問題だと捉えて、必死にこの危機に声を上げている。いったいどの程度この危機感は共有できているのだろうか。この危機感の差を埋めるにはどうしたらいいのだろうか?
政府の仕事は、有権者の願いをかなえることであり、私たちが真の気候変動対策を要求しなければ、もちろん本当の変化は起こらない。変化を望むなら、この危機感や問題点の認識を広げるしかない。つまり、声を上げるしかないのだ。
もしこの危機感が広まったら、もし世界中の人がこの危機感を持ち、問題に気づけたなら、絶対に気候変動は抑えることができる。みんなが幸せに暮らせる明るい未来に、まだ進んでいける時間は残されている。しかし、皆さんご存知の通り時間はない。世界中の政府が掲げる目標と、気候正義のために本当に求めなくてはいけない目標の差は刻々と広がっている。 このギャップは、もはや無視できない。
私たちがこのギャップを解決できるまで、本当の社会の変革は不可能だ。
6月11日には、主要7ヶ国の首脳が集まるG7サミットが控えている。5月21日に行われたG7気候・環境大臣会合では、「石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因であることを認識」しているにもかかわらず、海外の融資停止期限がなく、「各国の裁量に任せ」ている点から厳格な融資禁止に対する行動は不明確であった。また、日本国内にしても低効率、高効率かかわらず石炭火力発電を停止する時期が明記されず、廃止に消極的であることが露呈した。
エナシフTVのG7気候・環境大臣会合の日本一わかりやすい説明動画
私たちはこのG7も声を届ける大事な機会だと考え、様々な手段でのアプローチを考えている。詳しい情報は、SNS等で公開されるのを待っていてほしい。
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Mind The Gapを埋めるには、意識の差をなくさなくてはいけない。そのためには、私たちが感じている危機感を多くの人に広める必要がある。そして私たちが本当の社会システムの変化を求めて声を上げる必要があるのだ。
あなたの声には、絶対に意味がある。
直接は政府に届かなくても、その声は巡り巡って必ず届く。
あなたの一言が、あなたの友人や家族の意識を変え、政府や企業の意識を変え、社会を変えていくのだ。
いつも最後に伝えたいことは同じだ。
一緒に声をあげよう。
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