世界では「地球温暖化防止のために牛肉や乳製品を食べることを控える」という運動が広がっている。
日本政府は2021年の「環境・循環型社会・生物多様性白書」の中で、食料に関して「生産から加工、廃棄に至るまでのCO2の排出、農地への転用に伴う森林開発といった環境負荷が生じる可能性がある」と説明。特に肉類について「飼料の生産・輸送に伴うCO2排出に加え、家畜の消化器からのメタンの発生」により、温室ガス排出量が多いと指摘した。 こうした背景から、環境省は大豆など植物由来で生産過程でのCO2排出が少ない「代替肉」を「食の一つの選択肢」として推奨している。
我々が肉を食べる日は消えてしまうのだろうか。 今回は特に話題になっている「牛肉」に焦点を当て、牛がどう環境に影響を及ぼすのか述べる。
目次[非表示]
まず始めに、家畜における温室効果ガスの影響をみていこう。世界全体の温室効果ガス排出における農林水産分野の割合は4分の1を占め、その排出源は、農耕地の土壌由来(N2O)、家畜の消化管内発酵(CH4)、稲作(CH4)等からなる。
農林水産省が発表しているデータによると、日本全体の温室効果ガスの総排出量約13億トン(CO2換算)のうち、農林水産分野が占める割合は約4%となっている。4%と言うと大きくないように感じるが、同年の日本のGDPに占める農林水産業の割合は1%であるため、付加価値額と比較すると、排出量が大きいという解釈もある。畜産からの排出量は農業の3分の1で、そのおよそ半分は酪農からの排出となっている。
農林水産分野の内訳では、燃料燃焼由来のCO2が約33%、家畜の消化管内発酵(反芻動物のゲップ)由来のメタンが約15%、家畜排せつ物由来のメタンや一酸化二窒素は合わせて約12%であり、農地の土壌由来の一酸化二窒素が約11%となっている。畜産分野由来の温室効果ガスの排出量が農林水産分野に占める割合は約3割となった(図1)。
図1:農林水産業からのGHGの排出(2018年度)
出所:農林水産省 生産局 畜産振興課
令和3年版の環境白書によると、 世界の食料部門における温室効果ガス排出量(食料の生産、加工、流通、調理、消費等に関連する排出量)は、人為起源の排出量の21~37%を占めると推定される。まず、日本人の食事に伴う1人当たりのカーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算)を見てみよう。
日本人の食生活におけるカーボンフットプリントは?・・・次ページ
気候変動の最新記事