2022年2月の電気料金が大手電力会社すべてで値上がりする。全社いっせい値上げは6ヶ月連続で、2016年4月に電力小売り自由化がはじまって以降、もっとも高い水準に達している。火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)や石油、石炭価格の高騰が止まらないためだ。暖房など電気使用量が増える冬期の値上げは、家計にさらなる負担を迫る。
大手電力会社によると、2022年2月の値上げ幅は一般的な標準家庭で2022年1月と比べて北陸電力を除く9社が100円を超える。
東京電力は前月比で330円高い月7,961円となり、中部電力は351円高の7,657円、関西電力は215円高い7,418円となるなど、2016年4月の電力小売自由化以降、最高値を更新する電力会社が相次いでいる。東京・関西・中部電力3社の電気料金はこの1年で15%以上上昇しており、東京電力では1,636円高くなる。
大手電力会社の値上げ幅(2022年2月)
中部電力 | 351円 |
東京電力 | 330円 |
東北電力 | 262円 |
沖縄電力 | 247円 |
中国電力 | 242円 |
関西電力 | 215円 |
四国電力 | 172円 |
九州電力 | 140円 |
北海道電力 | 131円 |
北陸電力 | 78円 |
背景にあるのが、LNGや原油などの世界的な高騰だ。特にロシアからの供給不安やウクライナ情勢の緊迫化に揺れる欧州では、LNGのスポット(随時契約)価格が2021年12月21日、100万BTU(英国熱量単位)あたり59.86ドルと史上最高値を記録。本格的な冬の到来を迎え、ガス危機に陥るのではと緊張感が走る。
欧州でのLNG価格の急騰に引きずられ、日本のLNG価格も高止まりしている。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)は2021年11月の日本着スポットLNGの平均価格が35ドルだったと発表、2014年3月以来の最高値をつけた。
電気料金はLNGや石炭、石油などの燃料費の変動分が自動で転嫁される「燃料費調整制度」が適用されており、貿易統計をもとに過去3ヶ月の平均燃料価格が2ヶ月先の料金に反映される。2022年2月分の場合であれば、2021年9~11月の平均燃料価格をもとに算出する。
火力発電への依存度が高い電力会社ほど、電気料金が上がりやすい。そのため大手電力会社では、特にLNGに関して、価格変動が激しいスポット価格での調達ではなく、長期契約による調達比率を大幅に引き上げることで、リスクヘッジをしてきた。ただし、長期契約の価格は原油価格に連動して決まる仕組みで、この原油価格の上昇が止まらない。JOGMECによると、「全日本平均原油輸入CIF価格(JCC:Japan crude cocktail)は2021年11月には82.08ドルと2014年11月以来の高値を記録」、そのため2月の電気代の上げ幅が1月に比べ拡大した。
さらにJOGMECは「原油価格リンクの長期契約が7〜8割を占める日本平均LNG輸入価格は、今後も堅調に推移する」と予想する。つまり、原油価格が下がらない限り、LNGの長期契約の高止まりが続くうえ、石油や石炭価格も高値圏で推移するというわけだ。そのため2021年12月の燃料価格が電気料金に自動反映される2022年5月までは、電気料金の値上がりが続く可能性すら浮上しており、家計はさらなる負担を迫られそうだ。
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